薬害の問題は「4 点セット」で覚える

第 1 章の薬害訴訟は、ほぼ毎年出題される定番論点です。問われ方は決まっていて、「どの医薬品で」「どんな被害が起き」「いつ提訴・和解し」「その後どんな制度ができたか」の入れ替えで正誤を問います。したがって 5 つの訴訟について、この 4 点を表で押さえるのが最短です。

訴訟 原因となった医薬品 被害 和解など その後の制度
サリドマイド 催眠鎮静剤(胃腸薬にも配合) 出生児の四肢欠損・耳の障害などの先天異常(サリドマイド胎芽症) 1963 年提訴、1974 年和解 各国で市販後の副作用情報収集体制を整備
スモン 整腸剤のキノホルム製剤 亜急性脊髄視神経症(腹痛・下痢の後に下半身の痺れ・歩行困難、失明も) 1971 年提訴、1979 年全面和解 1980 年 医薬品副作用被害救済制度
HIV HIV が混入した原料血漿から作られた血液凝固因子製剤 血友病患者の HIV 感染 1989 年提訴、1996 年和解 1996 年薬事法改正(感染症報告の義務化、緊急輸入制度)、「誓いの碑」
CJD 脳外科手術に用いたヒト乾燥硬膜 プリオンによるクロイツフェルト・ヤコブ病 1996・97 年提訴、2002 年和解 2002 年薬事法改正(生物由来製品の安全対策、生物由来製品感染等被害救済制度)
C 型肝炎 特定のフィブリノゲン製剤・血液凝固第 Ⅸ 因子製剤 出産・手術時の投与による C 型肝炎ウイルス感染 2002〜07 年に 5 地裁で提訴 2008 年に給付金の特別措置法、医薬品等行政評価・監視委員会の設置

混同しやすい 3 つのペア

サリドマイドとスモンはどちらも一般用医薬品として販売されていた点が共通です。サリドマイドは「催眠鎮静剤」、キノホルムは「整腸剤」。サリドマイドは妊婦が使って胎児に被害が出た(血液-胎盤関門を通過して血管新生を妨げた)のに対し、スモンは使った本人に神経症状が出た、という違いで区別します。サリドマイドで押さえる細かい点は、催奇形性は S 体だけが持つが、体内で R 体と S 体が相互に転換するため R 体だけを製剤化しても避けられない、という記述です。

HIV と CJD はどちらも「生物由来」の製品による感染で、和解を受けて制度が整いました。HIV は血液製剤(血友病患者)、CJD はヒト乾燥硬膜(脳外科手術の患者)。HIV 訴訟を踏まえた 1996 年改正で「感染症報告」と「緊急輸入」、CJD 訴訟を踏まえた 2002 年改正で「生物由来製品感染等被害救済制度」ができたと、年と制度をひも付けます。

HIV と C 型肝炎はどちらも血液を原料とする製剤です。HIV は血液凝固因子製剤、C 型肝炎はフィブリノゲン製剤と血液凝固第 Ⅸ 因子製剤。C 型肝炎だけは訴訟の判決が分かれたため、和解ではなく**議員立法による特別措置法(2008 年)**で救済が図られた、という点が独特です。

年号の覚え方

年号を全部覚える必要はありませんが、次の 3 つは頻出です。

  1. 1980 年 = 医薬品副作用被害救済制度の創設。サリドマイド訴訟とスモン訴訟を契機に作られた。「サリドマイド・スモンの後、ハチマル(80)で救済」
  2. 1996 年 = HIV 訴訟の和解と薬事法改正。「クロ(96)い血液(HIV)」
  3. 2002 年 = CJD 訴訟の和解と薬事法改正。「ゼロニ(02)で生物由来」

年の順に並べると、サリドマイド(1974 和解)→ スモン(1979 全面和解)→ 救済制度(1980)→ HIV(1996)→ CJD(2002)→ C 型肝炎(2008 特措法)となり、サ・ス・H・C・C の順で覚えると時系列も一緒に入ります。

出題の傾向と学習のコツ

正誤問題では、原因の医薬品を入れ替える(「スモンはサリドマイド製剤による」)、被害を入れ替える(「CJD は血液製剤による」)、制度を入れ替える(「C 型肝炎訴訟を契機に副作用被害救済制度ができた」)の 3 パターンがほとんどです。表の縦の列をずらして読んでも違和感を持てるかを、自分で確認しながら覚えてください。

もう 1 つ、手引きはこの節の最後で「サリドマイド製剤・キノホルム製剤は過去に一般用医薬品として販売されていた」ため、販売に従事する専門家も副作用報告などを通じて薬害防止の責務の一端を担う、と締めくくっています。この「専門家の責務」の一文も、そのまま正誤問題になります。