「使用上の注意」は 3 つの見出しでできている
添付文書の「使用上の注意」は、**「してはいけないこと」「相談すること」「その他の注意」**の 3 つで構成され、適正使用のために重要な項目が前段に置かれます。枠囲いや文字の色・大きさを変えて目立つように記載され、「してはいけないこと」「相談すること」の見出しには標識的なマークが付されていることが多い、というのが手引きの記述です。
「してはいけないこと」の 4 つの小見出し
「してはいけないこと」には、守らないと症状が悪化したり、副作用や事故が起こりやすくなったりする事項が書かれます。小見出しは 4 つです。
| 小見出し | 記載される内容 | 例 |
|---|---|---|
| 次の人は使用(服用)しないこと | アレルギー歴・症状・基礎疾患・年齢・妊娠・授乳からみて重篤な副作用の危険性が特に高い人 | 「15 歳未満の小児」「6 歳未満の小児」など |
| 次の部位には使用しないこと | 局所に使う医薬品で、使用を避けるべき患部の状態や適用部位 | 目の周囲、粘膜など |
| 本剤を使用している間は、次の医薬品を使用しないこと | 併用で作用増強や副作用リスク増大が予測される医薬品 | 他のかぜ薬・解熱鎮痛薬 |
| その他「してはいけないこと」 | 副作用や事故の防止のため避けるべき事項 | 服用後の運転操作、飲酒、長期連用 |
覚えておきたい細かい点が 2 つあります。1 つは、ショック(アナフィラキシー)や皮膚粘膜眼症候群など重篤な副作用が掲げられている医薬品では、アレルギーの既往歴がある人が「使用しないこと」に入ること。もう 1 つは、医療用医薬品との併用は「してはいけないこと」ではなく「相談すること」の「医師(又は歯科医師)の治療を受けている人」に書かれることです。治療のために処方された薬を自己判断で控えるのは適当でないため、という理由まで押さえてください。
「相談すること」に書かれる人
「相談すること」は、使用前にその適否を専門家に相談した上で判断すべき場合の記載です。代表的な項目は次の通りです。
- 医師(又は歯科医師)の治療を受けている人: 処方薬との重複や相互作用、治療の妨げになるおそれ
- 妊婦又は妊娠していると思われる人: ヒトでの悪影響が判明しているとは限らないが、妊婦での使用経験のデータが限られ安全性評価が困難なものが多い
- 授乳中の人: 乳汁に移行するが、「してはいけないこと」に書くほどではない場合
- 高齢者: 目安は 65 歳以上。年齢だけでリスクの程度は判断できず、個々の状態に応じて判断する
- 薬などによりアレルギー症状を起こしたことがある人: 他の医薬品でアレルギー歴がある人やアレルギー体質の人はリスクが高い
- 次の症状がある人/次の診断を受けた人: 生活者が自分で判断しにくい症状や、基礎疾患が悪化するおそれのある場合
医薬品副作用被害救済制度の基本
第 5 章の後半では、医薬品を適正に使用したにもかかわらず生じた副作用による健康被害を救済する制度を扱います。サリドマイド訴訟・スモン訴訟を契機に、製薬企業の社会的責任に基づく公的制度として 1980 年 5 月に運営が始まりました。給付請求を受けて、医薬品の副作用によるものか・適正に使用されたかなどを薬事審議会の諮問・答申を経て厚生労働大臣が判定し、給付が行われます。給付費は製造販売業者からの拠出金が充てられ、事務費の 2 分の 1 相当額は国庫補助で賄われます。運営は独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が担います。
給付は 7 種類あり、請求期限の有無が問われます。
| 給付の種類 | 内容 | 請求期限 |
|---|---|---|
| 医療費 | 副作用による疾病の治療に要した費用の実費(健康保険等の給付を差し引く) | 費用の支払いから 5 年以内 |
| 医療手当 | 治療に伴う医療費以外の費用(定額) | 医療が行われた月の翌月初日から 5 年以内 |
| 障害年金 | 一定程度の障害がある 18 歳以上の人の生活補償(定額) | なし |
| 障害児養育年金 | 一定程度の障害がある 18 歳未満の人を養育する人への給付(定額) | なし |
| 遺族年金 | 生計維持者が死亡した場合の遺族の生活立て直し(定額) | 死亡から 5 年以内(例外あり) |
| 遺族一時金 | 生計維持者以外が死亡した場合の遺族への見舞等(定額) | 遺族年金と同じ |
| 葬祭料 | 葬祭に伴う出費(定額) | 遺族年金と同じ |
医療費・医療手当の対象は、副作用による疾病が「入院治療を必要とする程度」の場合です(やむを得ず自宅療養した場合も含む)。医療機関での治療を要さずに寛解した軽度のものは対象になりません。
救済の対象にならないケースと必要書類
次のケースは救済給付の対象外です。正誤問題で最も狙われる部分です。
- 不適正な使用による健康被害(用法用量・使用上の注意に従っていない)
- 対象外の医薬品: 要指導医薬品・一般用医薬品では殺虫剤・殺鼠剤(人体に直接使用するものを除く)、殺菌消毒剤(同)、一般用検査薬、一部の日局収載医薬品(精製水・ワセリン等)
- 製品不良など製薬企業に損害賠償責任がある場合(この場合は医薬品 PL センターへの相談が推奨される)
- 無承認無許可医薬品(いわゆる健康食品として販売されたもの、個人輸入で入手した医薬品)の使用による健康被害
請求には、医師の診断書、医療費を証明する受診証明書などのほか、その医薬品を販売した薬局開設者・販売業者が作成する販売証明書が必要です。登録販売者は販売証明書の発行に円滑に対応することが求められており、健康被害が救済の対象になりそうなときは制度の存在と PMDA の相談窓口を紹介する役割も期待されています。