まず年齢区分を正確に覚える
小児や高齢者の問題は、最初に年齢の数字を問われます。手引きは「医療用医薬品の添付文書等の記載要領の留意事項」の年齢区分を目安として示しています。
| 区分 | 年齢 |
|---|---|
| 新生児 | 生後 4 週未満 |
| 乳児 | 生後 4 週以上、1 歳未満 |
| 幼児 | 1 歳以上、7 歳未満 |
| 小児 | 7 歳以上、15 歳未満 |
| 高齢者 | 65 歳以上 |
注意点が 2 つあります。1 つは「一般的に 15 歳未満を小児とすることもある」こと、もう 1 つは使用上の注意では「3 歳未満の小児」のように具体的な年齢で書かれる場合があることです。「幼児は 7 歳未満」を「6 歳未満」に、「小児は 15 歳未満」を「12 歳未満」に変えた選択肢が典型的なひっかけです。
小児: 生理機能が未発達で作用が強く出る
小児で副作用が起きやすい理由は、手引きでは 3 点にまとめられています。
- 身体の大きさに対して腸が長いため、服用した医薬品の吸収率が相対的に高い
- 血液脳関門が未発達なため、成分が脳に達しやすく、中枢神経系に影響する医薬品で副作用を起こしやすい
- 肝臓・腎臓の機能が未発達なため、代謝・排泄に時間がかかり、作用が強く出過ぎたり副作用がより強く出たりする
販売の場面では、「成人用の薬を減らして子どもに飲ませる」という安易な使用を避け、年齢に応じた用法用量が定められた製品を使うよう説明することが求められます。錠剤・カプセル剤は喉につかえやすいため、5 歳未満の幼児に使う製品には添付文書に注意が書かれています。乳児は状態が急変しやすく一般用医薬品の適否を見極めにくいので、基本は医師の診療を優先し、一般用医薬品での対処は夜間など受診が困難な場合の最小限にとどめます。誤飲・誤用事故は通常の使用とは異なる事態を招くので、専門家への相談や医療機関への受診が必要で、予防には「小児の目につく場所・手の届く場所に置かない」ことが重要です。
高齢者: 肝腎機能の低下と「個人差」
高齢者の目安は 65 歳以上です。一般に生理機能が衰え、特に肝臓や腎臓の機能が低下していると医薬品の作用が強く現れやすく、副作用のリスクが高くなります。ただし手引きは「衰えの度合いは個人差が大きく、年齢のみから一概にリスクの程度を判断することは難しい」と念を押しています。「65 歳以上は一律にリスクが高いと判断する」という選択肢は誤りです。
そのほか高齢者に特有の注意点として、次が挙げられています。
- 喉の筋肉の衰え(嚥下障害)で内服薬を喉に詰まらせやすい。医薬品の副作用で口渇が生じると誤嚥を誘発しやすい
- 持病(基礎疾患)を抱えていることが多く、一般用医薬品で症状が悪化したり治療の妨げになったりする。複数の医薬品を長期間使うと副作用リスクも高い
- 説明の理解に時間がかかる、細かい文字が読みづらい、包装から取り出しにくい、取り違えや飲み忘れが起きやすい。家族や介護関係者の協力を含めた配慮が必要
妊婦・授乳婦: 「相談すること」が多い理由
妊婦については、胎児が**胎盤(血液-胎盤関門)**を通じて栄養を受け取っていること、そして母体が使った医薬品が血液-胎盤関門でどの程度防御されるかは未解明のことが多いこと、が基本です。一般用医薬品の多くは妊婦での安全性評価が困難なため、添付文書では「相談すること」とされているものが多くなっています。
具体的に危険性が指摘されているものとして、手引きは 2 つの例を挙げています。
- ビタミン A 含有製剤: 妊娠前後の一定期間に通常量を超えて摂取すると、胎児に先天異常を起こす危険性が高まる
- 便秘薬: 配合成分やその用量によっては流産や早産を誘発するおそれがある
また、妊娠の有無や可能性は他人に知られたくない場合があるため、情報提供や相談対応では十分な配慮が求められます。
授乳婦については、医薬品の成分の一部が乳汁中に移行し、母乳を介して乳児が摂取することがあります。乳幼児に好ましくない影響が知られている医薬品では、授乳期間中の使用を避けるか、使用後しばらく授乳を避けられるよう、専門家から積極的に情報提供する必要があります。一方で、乳汁に移行しても通常の使用範囲では具体的な悪影響が判明していないものもあり、相談があれば移行する成分や作用について適切に説明します。
医療機関で治療を受けている人も忘れずに
同じ節には「医療機関で治療を受けている人等」も含まれます。慢性疾患を持つ生活者は多く、一般用医薬品で症状が悪化したり治療が妨げられたりすることがあります。処方薬を使っている人との併用可否は登録販売者が判断することが難しい場合が多いため、処方した医師・歯科医師または調剤した薬剤師に相談するよう説明し、必要に応じてお薬手帳を活用します。
この節の内容は第 3 章の各成分(アスピリンの 15 歳未満、コデイン類の授乳婦など)や第 5 章の添付文書の読み方とつながっています。年齢区分と「なぜリスクが高いか」の理由をここで固めておくと、他章の問題でも根拠から判断できるようになります。