改訂で何が変わったのか

令和 8 年 4 月の手引き改訂で、第 4 章(薬事に関する法規・制度)に 2 つの新しい区分が加わりました。1 つは濫用のおそれのある医薬品を法律上位置づけた「指定濫用防止医薬品」、もう 1 つは要指導医薬品のうち薬剤師の対面販売が特に必要な「特定要指導医薬品」です。どちらも改訂直後の試験で狙われやすく、古いテキストには載っていない論点なので、この記事で要点を固めてください。

指定濫用防止医薬品とは

法第 36 条の 11 第 1 項で、次の医薬品のうち「濫用をした場合に中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚を生ずるおそれがあり、その防止を図る必要がある医薬品」として厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定するもの、と定められています。

  • 薬局製造販売医薬品(薬局開設者が自ら製造して直接販売するもの)
  • 要指導医薬品
  • 一般用医薬品

指定成分は次の 8 つで、いずれも「外用剤を除く」内服薬などが対象です。生薬を主たる有効成分とする製剤は含まれません。

指定成分 主な用途
エフェドリン 鼻炎用内服薬など
コデイン 鎮咳(かぜ薬・咳止め)
ジヒドロコデイン 鎮咳(かぜ薬・咳止め)
ジフェンヒドラミン 抗ヒスタミン(催眠鎮静薬・かぜ薬)
デキストロメトルファン 鎮咳(かぜ薬・咳止め)
プソイドエフェドリン 鼻炎用内服薬・かぜ薬
ブロモバレリル尿素 鎮静(解熱鎮痛薬・催眠鎮静薬)
メチルエフェドリン 気管支拡張(かぜ薬・鼻炎用内服薬)

「エ・コ・ジ・ジ・デ・プ・ブ・メ」と頭文字で覚えると、8 つを漏らしません。第 3 章の「依存性がある成分」(コデイン類・アドレナリン作動成分・ブロモバレリル尿素)とそのまま重なるので、セットで覚えると両章に効きます。

販売のルール: 数量・年齢・情報提供

指定濫用防止医薬品を販売・授与するとき、薬局開設者・店舗販売業者・配置販売業者は次を守る必要があります。

  1. 情報提供: 薬剤師または登録販売者に、定められた事項を記載した書面を用いて情報提供させる。濫用した場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがあることなどを伝える
  2. 確認事項: 購入者の年齢、他の指定濫用防止医薬品の購入状況、適正使用目的であることなどをあらかじめ確認させる。18 歳未満の場合はその者の氏名も確認する
  3. 数量の上限: 指定濫用防止医薬品ごとに、一包装で、用法用量からみて5 日分を超えない数量までしか販売できない。ただし、かぜ薬(ジヒドロコデイン・ジフェンヒドラミン・デキストロメトルファン・プソイドエフェドリン・メチルエフェドリン)、鼻炎用内服薬(プソイドエフェドリン・メチルエフェドリン)、解熱鎮痛薬(ブロモバレリル尿素)としての効能効果を持つ製剤は 7 日分まで
  4. 年齢制限: 18 歳未満の者には、原則として販売できない。例外は、上限数量の範囲内で購入しようとする 18 歳未満に対し、薬剤師または登録販売者が対面等により情報提供を行う場合
  5. 上限を超える販売: 18 歳以上であっても、上限数量を超えて購入しようとする場合はその理由を確認し、薬剤師または登録販売者が対面等で情報提供する場合に限られる
  6. 情報提供ができない場合や適正使用を確保できないと認められる場合は販売してはならない。販売等の手順を記載した販売等手順書を作成し、それに基づいて販売させる

数量の上限は「原則 5 日分、かぜ薬などは 7 日分」の 2 パターンで覚えます。「エフェドリンとコデインは例外なく 5 日分」という点も表から確認しておいてください。また、小容量の製品にはその旨(「要確認」の字句)が外箱に表示されます。

特定要指導医薬品とは

要指導医薬品は、適正使用のために薬剤師の情報提供と薬学的知見に基づく指導が必要な医薬品です。改訂前は「対面」での情報提供が要件でしたが、令和 8 年改訂で「対面等」(対面のほか、厚生労働省令で定める方法を含む)に広がりました。

その上で、法第 4 条第 3 項第 4 号ロにより、適正使用のために薬剤師の対面による販売・授与が特に必要として厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定する要指導医薬品が「特定要指導医薬品」と規定されました。指定は令和 7 年の厚生労働省告示で定められています。

薬局開設者・店舗販売業者は、特定要指導医薬品については、要指導医薬品の販売方法(使用者本人の確認、他店での購入状況の確認、必要な数量に限る、理解と質問がないことの確認、薬剤師の氏名・連絡先の伝達など)に加えて、次を薬剤師に対面により行わせなければなりません。

  • 対面による販売が特に必要とされた理由を踏まえた対応を行うこと
  • 販売時に留意すべき事項に基づき、販売または授与を行うこと

混同しやすいポイントの整理

論点 要指導医薬品 特定要指導医薬品 指定濫用防止医薬品
販売できる専門家 薬剤師 薬剤師 薬剤師または登録販売者(一般用の第二類・第三類の場合)
情報提供の方法 対面等 対面のみ 書面を用いた情報提供、上限超え・18 歳未満は対面等
数量 適正使用に必要な数量に限る 同左 原則 5 日分、かぜ薬などは 7 日分
年齢 18 歳未満は原則販売不可

登録販売者が関わるのは主に指定濫用防止医薬品です。要指導医薬品・特定要指導医薬品は薬剤師しか販売できないため、「登録販売者が特定要指導医薬品を対面で販売した」という選択肢は誤りになります。改訂点は第 5 章の「指定濫用防止医薬品には『過量服用しないこと』の表示」ともつながっているので、併せて確認しておきましょう。