副作用の問題は「症状・時期・リスクのある人」で狙われる

第 2 章の後半「症状からみた主な副作用」は、全身に現れる副作用と臓器ごとの副作用を扱います。正誤問題では、症状を別の副作用のものに入れ替える、発症時期の数字を変える、リスクの高い人を入れ替える、の 3 パターンが中心です。ここでは出題頻度の高い 4 つを、その 3 点で比べます。

副作用 特徴的な症状 発症時期 起きやすい人・注意点
皮膚粘膜眼症候群(SJS) 38 ℃以上の高熱、発疹・発赤、火傷様の水疱が皮膚・口・眼の粘膜に 使用開始後 2 週間以内が多いが、1 ヶ月以上経ってからも 発症頻度は人口 100 万人あたり年間 1〜6 人。予測は極めて困難
中毒性表皮壊死融解症(TEN) 38 ℃以上の高熱、全身の 10 % 以上に火傷様の水疱・皮膚の剥離・びらん SJS と同じ 年間 0.4〜1.2 人。多くは SJS の進展型
偽アルドステロン症 手足の脱力・血圧上昇・筋肉痛・こむら返り・むくみ・喉の渇き 長期服用後に初めて発症することも 体表面積が小さい人・高齢者。グリチルリチン酸(カンゾウ)
無菌性髄膜炎 首筋のつっぱりを伴う激しい頭痛、発熱、吐きけ・嘔吐、意識混濁 急性 全身性エリテマトーデス・混合性結合組織病・関節リウマチの人。イブプロフェン
間質性肺炎 息切れ・息苦しさ、空咳、発熱(伴わないこともある) 使用開始から 1〜2 週間程度 かぜや気管支炎と区別しにくい。悪化すると肺線維症へ

SJS と TEN: 別名と「10 %」で区別する

皮膚粘膜眼症候群は最初に報告した 2 人の医師の名前からスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、中毒性表皮壊死融解症はライエル症候群とも呼ばれます。別名を入れ替えた選択肢が出るので、「SJS = 二人の医師」「TEN = ライエル」と結びつけておきます。

両者の違いは皮膚症状の範囲です。TEN は「全身の 10 % 以上に火傷様の水疱・皮膚の剥離・びらん」があり、口唇の発赤・びらんや眼の充血を伴います。SJS の症例の進展型とみられており、発生頻度は SJS より低い(年間 0.4〜1.2 人)。どちらも発症機序の詳細は不明で予測は困難ですが、一旦発症すると多臓器障害で致命的になったり、軽快後も眼や呼吸器に障害が残ったりする重篤な疾患です。

前兆として重要なのが両眼の急性結膜炎(充血・目やに・流涙・まぶたの腫れ)です。皮膚や粘膜の変化と同時期か、半日〜1 日程度先行して生じることが知られており、この症状が出たら SJS/TEN の前兆を疑って使用を中止し、直ちに皮膚科の専門医を受診する必要があります。「発症後に結膜炎が起こる」という逆の記述は誤りです。

偽アルドステロン症: 「アルドステロンは増えていない」

偽アルドステロン症は、体内に塩分(ナトリウム)と水が貯留し、カリウムが失われることで生じる病態です。副腎皮質からのアルドステロン分泌が増加していないにもかかわらずこの状態になるので「偽」と呼ばれます。「アルドステロンの分泌が増加して生じる」と書かれていたら誤りです。

症状は手足の脱力・血圧上昇・筋肉痛・こむら返り・倦怠感・しびれ・頭痛・むくみ・喉の渇き・吐きけなどで、進行すると筋力低下・起立不能・歩行困難・痙攣に至ります。低身長・低体重など体表面積が小さい人や高齢者で生じやすく、長期服用後に初めて発症することもあり、複数の医薬品や食品との相互作用でも起きます。初期症状に不審を感じつつ重症化させる例が多いので、疑ったら直ちに使用を中止して医師の診療を受けます。第 3 章とのつながりでは、グリチルリチン酸二カリウム・グリチルレチン酸・カンゾウが原因成分として挙げられています。

無菌性髄膜炎: 基礎疾患のある人が要注意

髄膜炎のうち髄液に細菌が検出されないものを無菌性髄膜炎といいます。大部分はウイルスが原因ですが、医薬品の副作用でも生じ、その場合は全身性エリテマトーデス・混合性結合組織病・関節リウマチなどの基礎疾患がある人で発症リスクが高くなります。第 3 章ではイブプロフェンがこの副作用を起こしやすい成分として登場します。

発症は多くの場合急性で、首筋のつっぱりを伴う激しい頭痛・発熱・吐きけ・嘔吐・意識混濁が現れます。早期に原因医薬品を中止すれば速やかに回復し予後は比較的良好ですが、重篤な中枢神経系の後遺症が残った例もあります。また、過去に軽い症状を経験した人が同じ医薬品を再度使うと再発し、急激に進行することがある点も問われます。

間質性肺炎: 「かぜと区別しにくい」がキーワード

通常の肺炎は気管支や肺胞の細菌感染ですが、間質性肺炎は肺胞と毛細血管を取り囲む組織(間質)の炎症です。ガス交換の効率が落ちて低酸素状態になり、息切れ・息苦しさ、空咳(痰の出ない咳)、発熱が現れます。発症は使用開始から 1〜2 週間程度が多く、息切れは初期には登坂などの運動時に感じ、進行すると平地歩行や家事でも意識されます。「必ずしも発熱は伴わない」という一文は正誤問題の定番です。

かぜや気管支炎の症状と区別が難しいこと、一過性で自然に回復することもあるが悪化すると肺線維症に移行すること、を押さえたうえで、疑わしければ直ちに使用を中止して医師の診療を受ける、という対応まで覚えておきましょう。