かぜ薬は「働きごとの成分リスト」で覚える

かぜ薬(総合感冒薬)は、かぜのウイルスを退治する薬ではなく、諸症状を緩和する対症療法の薬です。複数の成分が配合されており、第 3 章の他の薬効群(解熱鎮痛薬・鎮咳去痰薬・アレルギー用薬)と成分が重なります。まず「どの働きにどの成分が入っているか」を表で押さえます。

働き 主な成分
解熱鎮痛 アスピリン、サリチルアミド、エテンザミド、アセトアミノフェン、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン
くしゃみ・鼻汁を抑える(抗ヒスタミン) クロルフェニラミンマレイン酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩、メキタジン、クレマスチンフマル酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩
鼻粘膜の充血緩和・気管支拡張(アドレナリン作動) メチルエフェドリン塩酸塩、プソイドエフェドリン塩酸塩、生薬のマオウ
咳を抑える(鎮咳) コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、ノスカピン、チペピジンヒベンズ酸塩、クロペラスチン塩酸塩
痰の切れをよくする(去痰) グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、ブロムヘキシン塩酸塩、エチルシステイン塩酸塩
炎症を和らげる グリチルリチン酸二カリウム、トラネキサム酸、生薬のカンゾウ

このうちアドレナリン作動成分とコデイン類には依存性があり、令和 8 年改訂で「指定濫用防止医薬品」の指定成分にもなっています(メチルエフェドリン、プソイドエフェドリン、コデイン、ジヒドロコデイン、デキストロメトルファン、ジフェンヒドラミンなど)。第 4 章とセットで覚えると効率的です。

解熱鎮痛成分の「してはいけないこと」

解熱鎮痛薬の問題で最も多いのが、年齢や状態による使用制限です。根拠とセットで整理します。

  1. アスピリン(アスピリンアルミニウムを含む)・サザピリン・サリチル酸ナトリウム → 15 歳未満はいかなる場合も使用しない。サリチル酸系成分でライ症候群の発生が示唆されているため
  2. エテンザミド・サリチルアミド → 水痘(水疱瘡)またはインフルエンザにかかっている 15 歳未満には使用を避ける。同じサリチル酸系だが、制限は「水痘・インフルエンザのとき」に限られる点が違う
  3. イブプロフェン → 15 歳未満はいかなる場合も使用しない。サリチル酸系ではないが、一般用医薬品では小児に使えない
  4. アスピリン → 出産予定日 12 週間以内は使用を避ける。血液を凝固しにくくする作用があり、胎児や出産時の母体に影響するため。イブプロフェンも出産予定日 12 週以内の妊婦は服用しない

一般の生活者にはかぜとインフルエンザの区別が難しいため、インフルエンザ流行期には、解熱鎮痛成分がアセトアミノフェンや生薬成分のみからなる製品を提案するといった対応が専門家に求められます。

各成分の特徴を一言で

  • アスピリン: 他の解熱鎮痛成分に比べて胃腸障害を起こしやすい。医療用では血栓予防にも使われるので、処方されている人は自己判断で一般用の解熱鎮痛薬を使わない。まれに肝機能障害
  • アセトアミノフェン: 主として中枢作用で解熱・鎮痛し、末梢の抗炎症作用は期待できない。その分、胃腸障害は少ない。まれに皮膚粘膜眼症候群・中毒性表皮壊死融解症・間質性肺炎・腎障害・肝機能障害があり、用量超過や酒類をよく飲む人で起きやすい。小児の解熱用の坐薬もあり、内服薬との併用に注意
  • イブプロフェン: 胃腸への悪影響が少なく抗炎症作用もあり、頭痛・咽頭痛・月経痛・腰痛に使われる。プロスタグランジン産生を抑えて消化管粘膜の防御機能を下げるため、胃・十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、クローン病の既往がある人は再発のおそれ。全身性エリテマトーデス・混合性結合組織病の人は無菌性髄膜炎を生じやすい
  • イソプロピルアンチピリン: 解熱・鎮痛作用は強いが抗炎症作用は弱く、他の成分と組み合わせる。一般用医薬品で唯一のピリン系で、薬疹(ピリン疹)に注意。アスピリンやサザピリンは名前に「ピリン」がつくが非ピリン系

コデイン類とその他の注意成分

コデインリン酸塩水和物・ジヒドロコデインリン酸塩は、モルヒネと同じ基本構造を持つ麻薬性鎮咳成分で、依存性があります。長期連用や大量摂取で倦怠感・虚脱感・多幸感が現れ、薬物依存につながるおそれがあります。注意点は 3 つです。

  • 12 歳未満の小児には使用禁忌(米国等の措置を踏まえ、呼吸抑制リスクの低減のため)
  • 胎盤を通過して胎児に移行し、分娩時の服用で新生児に呼吸抑制の報告。母乳移行で乳児にモルヒネ中毒の報告があり、授乳中は服用しないか授乳を避ける
  • 胃腸の運動を低下させ、副作用として便秘

グリチルリチン酸二カリウムはステロイドに似た化学構造を持ち、大量摂取で偽アルドステロン症を生じるおそれがあります。1 日最大服用量がグリチルリチン酸として 40 mg 以上の製品は、高齢者やむくみ・心臓病・腎臓病・高血圧のある人では注意が必要で、長期連用を避けます。医薬品では 1 日摂取量が 200 mg を超えないよう用量が定められています。

ブロモバレリル尿素・アリルイソプロピルアセチル尿素は解熱鎮痛成分の鎮痛作用を助ける鎮静成分で、眠気の副作用があるため乗物や機械の運転操作を避けます。ブロモバレリル尿素は胎児に障害を引き起こす可能性があり、妊婦は使用を避けます。

覚え方のまとめ

「15 歳未満」はアスピリン・サザピリン・サリチル酸ナトリウム・イブプロフェンの 4 つ、「水痘・インフルエンザの 15 歳未満」はエテンザミド・サリチルアミド、「12 歳未満」はコデイン類、「出産予定日 12 週以内」はアスピリンとイブプロフェン。数字と成分の対応を声に出して確認し、選択肢で数字だけを変えられても即答できる状態を目指してください。