胃腸薬は「胃の薬」と「腸の薬」に分けて覚える
手引きの第 3 章では、胃の薬(制酸薬・健胃薬・消化薬)と腸の薬(整腸薬・止瀉薬・瀉下薬)が別の節になっています。成分が多く混乱しやすい薬効群ですが、「どの働きに属する成分か」を先に決めてしまえば、副作用や注意点はその働きから推測できます。この記事では 5 つの働きに絞って整理します。
| 働き | 目的 | 代表的な成分 |
|---|---|---|
| 制酸 | 胃酸を中和する | 炭酸水素ナトリウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウム、生薬のボレイ |
| 健胃 | 味覚・嗅覚を刺激して胃液分泌を促す | オウバク、オウレン、センブリ、ゲンチアナ、リュウタン、ケイヒ、ユウタン |
| 整腸 | 腸内細菌のバランスを整える | ビフィズス菌、アシドフィルス菌、ラクトミン、乳酸菌、酪酸菌、生薬のケツメイシ・ゲンノショウコ・アセンヤク、トリメブチンマレイン酸塩 |
| 止瀉 | 下痢を止める | 次没食子酸ビスマス、タンニン酸アルブミン、ロペラミド塩酸塩、ベルベリン塩化物、木クレオソート |
| 瀉下 | 便を出す | ヒマシ油、センナ・センノシド・ダイオウ、ビサコジル、ピコスルファートナトリウム、酸化マグネシウム、カルメロースナトリウム、DSS、マルツエキス |
制酸成分: アルミニウムとマグネシウムの注意点
制酸成分は中和反応で胃酸の働きを弱めます。含まれる金属によって注意点が分かれるのがポイントです。
- アルミニウムを含む成分(乾燥水酸化アルミニウムゲルなど): 透析療法を受けている人が長期服用するとアルミニウム脳症・アルミニウム骨症の報告があり、透析を受けている人は使用を避ける。透析を受けていない人でも長期連用は避ける
- マグネシウムを含む成分: 瀉下薬にも配合されるため、下痢に注意。腎臓病の人では高マグネシウム血症のおそれ
- カルシウム・アルミニウムを含む成分: 止瀉薬にも配合されるため、便秘に注意
- 腎臓病の診断を受けた人は無機塩類の排泄が遅れて貯留しやすいので、使用前に医師・薬剤師に相談
制酸成分は炭酸飲料など酸度の高い食品と一緒に飲むと中和作用が低下するため、炭酸飲料での服用は適当ではありません。かぜ薬や解熱鎮痛薬にも配合されていることが多く、併用で制酸作用が強くなりすぎたり高カルシウム血症・高マグネシウム血症を生じたりするおそれがあります。
健胃成分と整腸成分: 生薬名を混同しない
健胃成分は苦味や香りで唾液・胃液の分泌を反射的に促す生薬が中心です。オウバク・オウレンは健胃のほか、止瀉薬にも収斂・抗菌・抗炎症を期待して使われ、ベルベリンを含む点でつながります。ユウタンは健胃と利胆(胆汁分泌促進)の両方に登場します。
整腸成分はビフィズス菌や乳酸菌などの生菌成分と、ケツメイシ・ゲンノショウコ・アセンヤクなどの生薬です。トリメブチンマレイン酸塩は消化管の平滑筋に直接作用して、運動が低下しているときは亢進的に、亢進しているときは抑制的に働く成分で、まれに肝機能障害を生じるため肝臓病の人は相談が必要です。
止瀉成分: 「どんな下痢に使ってはいけないか」
止瀉成分は働きが 5 つに分かれます。
- 収斂成分(ビスマスを含む成分、タンニン酸アルブミン): 腸粘膜のタンパク質と結合して膜を作り腸粘膜を保護。細菌性の下痢や食中毒のときに使うとかえって悪化するおそれ。ビスマスは 1 週間以上続けて使わない、服用時は飲酒を避ける、妊婦は使用を避ける。タンニン酸アルブミンは牛乳のタンパク質(カゼイン)由来なので牛乳アレルギーの人は使用を避ける
- ロペラミド塩酸塩: 食べすぎ・飲みすぎ・寝冷えによる下痢が対象で、食あたり・水あたりは対象外。15 歳未満の小児には適用がない。効きすぎて便秘やイレウス様症状、眠気・めまいのため運転を避け、飲酒しない。乳汁に移行するため授乳婦は避ける
- 腸内殺菌成分(ベルベリン塩化物、タンニン酸ベルベリン、アクリノール): 細菌感染による下痢に。下痢の予防や、治まった後に漫然と使うと腸内環境を悪化させる
- 吸着成分(炭酸カルシウム、天然ケイ酸アルミニウム、カオリン、薬用炭): 有害物質を吸着
- 生薬成分(木クレオソート): 過剰な腸の運動を正常化し水分・電解質の分泌も抑える
瀉下成分: 刺激性か、それ以外か
瀉下成分は「腸を刺激するもの」と「便を柔らかくするもの」に大別できます。
- 刺激性瀉下成分: 大量使用は避ける。ヒマシ油は小腸刺激性で、急激で強い瀉下作用(峻下作用)を示すため、激しい腹痛・吐きけのある人、妊婦、3 歳未満の乳幼児は使用を避ける。防虫剤や殺鼠剤など脂溶性物質による中毒には使わない。センナ・センノシド・ダイオウ・ビサコジル・ピコスルファートナトリウムは大腸刺激性で、流産・早産を誘発するおそれがあり、特にセンナ・センノシドは妊婦は使用を避ける。センナ・センノシド・ダイオウは乳汁に移行して乳児に下痢を起こすため授乳婦も注意。ビサコジルの腸溶性製剤は服用前後 1 時間以内に制酸薬や牛乳を避ける
- 無機塩類(酸化マグネシウムなど): 浸透圧で糞便の水分を増やす。腎臓病の人は高マグネシウム血症のおそれ。硫酸ナトリウムは心臓病の人は相談
- 膨潤性瀉下成分(カルメロースナトリウム、プランタゴ・オバタ): 水分を吸って便のかさを増やす。十分な水分摂取と併せて使う
- DSS: 便に水分を浸透しやすくして柔らかくする
- マルツエキス: 麦芽糖が腸内細菌で発酵して生じるガスで便通を促す。比較的作用が穏やかで乳幼児の便秘に使われる
透析の人にアルミニウム、牛乳アレルギーにタンニン酸アルブミン、15 歳未満にロペラミド、妊婦にセンナとヒマシ油とビスマス、3 歳未満にヒマシ油。「誰に使ってはいけないか」を働きの分類と一緒に覚えると、成分名を入れ替えた正誤問題でも根拠から判断できます。